地元で有名な実業家がとあるレストランに行ったときの話です。
コース料理を注文した後、ワインに悦に入っていた実業家の元に、パンが配られた、そのときのことでした。
「おい、バターがないぞ!パンーといったら、当然バターだろ、早くもってこい!」
レストランの常連で、オーナーシェフとも親しく、地元で力のある実業家らしく、かなり横柄な態度でした。
実際怒鳴られている相手は、数日前に入店したばかりの新人ウェイター。
周りのテーブルのお客さんも、この顛末はどうなるのか、興味深々で見ています。
震え上がって、バターを取りに即座に走るかと思いきや、その新人ウェイター君、実業家の怒鳴り声が、まるで聞こえていないかのようなそぶりを見せています。
「おい、早くしろよ!オレが誰だと思っているんだ。のろのろしやがって。お前なんかクビにすることくらい、なんてことはないんだからな!」
ただ現場では、バターはまだ事業家のテーブルに届きません。
「俺を誰だと思ってるん・・・」
まだ話が終わらないうちに、新人ウェイター君が事業家の話に割り込みました。
「他のお客さんから、バター追加のリクエストがあったため、今、バターを切らしています。倉庫にあるバターを取りに行かなければいけないので、しばらくお待ち・・・」
今度話をさえぎるのは、事業家のほうだった。
「早く!今すぐ行けよ、今すぐ!オレを誰だと思っているんだ!オレは・・・」
新人ウェイター君は、またも話をさえぎって、こう言ったのでした。
「お客さん、バターのありかを知っているのはこの私。事業家でお店の常連のあなたでもバターのありかは知らないでしょう。だから、まずはしばらくお待ちいただけませんか。」
これは極端な例かもしれませんが、会社のコミュニケーションって、こんなことが意外に多いなあと、ふと思うことがあります。相手の人をRespect しないままに、色々とリクエストを出すことが、いかに無意味であるか。そして、どんな仕事でも、現場にいる人が一番、ものごとをわかっているということも。