2006年08月14日

「35歳転職限界説」を問う

世の中には、不思議な定説というのがあります。「転職の35歳限界説」もそのひとつでなないでしょうか。もともと誰がこのような情報を流したのか、そしてどのような経緯でこのような話が定説となってしまったのか、不思議に思うときがあります。

実際、定説とまでなっているのは、誰かが「継続的に」世間に対して35歳転職限界説を「啓蒙している」からではないかと思います。もちろんマスコミもそうですが、どちらかというと、もっと強い力が働いているように僕は思います。

それは何か。結論ですが、そうした啓蒙活動を大きなスケールで日々行っているのは、20代の転職を主に実現させている、日本の大手人材紹介会社で働くコンサルタントたちではないだろうかと、僕は考えています。

実際、日本の大手人材紹介会社は、毎日、ものすごい数の求人案件を取り扱い、求人企業と人材とのマッチングを行っています。大手であれば、数百人単位でコンサルタントが存在し、彼らが毎日、10人単位の数のビジネスマンと面談をしています。彼らが実際に担当しているのは、主に若手向けの求人であり、特に20代向けが多くなっています。大手1社だけでも、毎日、延べで3000人もの転職希望者に、「35歳転職限界説」を啓蒙しているといっても言い過ぎではないのかも、とすら思うことがあります。このインパクトは大きいでしょう。

実際、新聞や、求人情報誌、そして20代の若手を対象にした求人の多くは、若手の採用を企業が優先したいがために、採用の現場では30代が冷遇されることも多いのだろうと想像します。まるで30代になると、「もう活躍の場がない」という烙印を押されたのがごとく、日本の人材紹介会社のコンサルタントは、結果として30代、それも30代半ばを過ぎた人材には見向きもしなくなるケースが多いのでしょう。(求人の数としても、確かに若手を対象としたほうが自然と多くなります。)

こうなると、転職希望者の間には「35歳転職限界説」のような話が持ち上がるわけです。実際は、35歳が転職限界年齢なわけがなく、転職社会というのは、その個人の方の経験や実力によって、応募できる求人が変わってくるというだけなのだと思いますが。企業も、感覚的に35歳というのがひとつの分かれ目だと考えることはあっても、年齢ひとつだけで必ずしも採用をギブアップするということはないのだろうと思います。

多くの企業は新聞広告や求人情報誌などの媒体を使った採用は主に35歳以下を対象に限定し、35歳以上の経験者に対してはその分野に強い人材紹介会社を使って採用活動をしています。つまり、人材紹介会社にもいろいろと得意分野やすみわけがあって、35歳以上のミドルからシニア層の経験者を主なターゲットにした人材紹介会社も存在しているわけです。(私自身もこのカテゴリーにいます。)

世の中に、それも特に若い方々の間には、「35歳転職限界説」が根強く、その存在が大きいがゆえに間違った判断をする人も多いようです。今後、日本の転職社会が成熟していく過程で、世の中のこのような間違った定説も、だんだんと消えていくのでしょうか。40代でも、50代でも転職する人はいっぱいいるという事実が、もっと世の中に出ていくようになれば、若者も「35歳転職限界説」に惑わされず、もっと慎重に転職をするようになるのかもしれません。転職の失敗が若手に広がっていることは、成熟した転職社会を目指す際に、今後、大きな障害になるのではと思ったため、こんな話を書いてみました。