2008年08月15日

未訳の良書紹介 その二

本邦未訳のビジネス本を紹介する第二弾。

今回は、次の本を紹介します。

The Secret Language of Leadership: How Leaders Inspire Action Through Narrative

by Stephen Denning  (October 12, 2007)

ファイナンシャルタイムズの2007年ベストブックにノミネートされています。

 

Denningは、ストーリーテリング、物語力、ナレッジマネジメントについて数々の著作があります。ハーバードビジネスレビューの日本語版では200410月号「人々の想像を刺激するストーリーテリングの力」、また書籍では『チームリーダー』というタイトルの本(原題 Squirrel Inc.)や共著の『ストーリーテリングが経営を変える』が日本語で入手可能です。

日本のビジネス雑誌でも彼のことが取り上げられたことがあるようですし、「ストーリー」、「物語」といった言葉は、ビジネスシーンで(広告宣伝の方だけでなく)流行語になりつつあるように思います。

個人的な予言ですが、ストーリー、物語あるいはその関連用語は、2008から2009にかけての流行語大賞候補になると思っています。そのデニングがリーダーシップについて書いたのがこの本。ファイナンシャルタイムズの2007年ベストブックにノミネートされています。

 

今までの著作の中心テーマはナレッジマネジメントやストーリーテリングについてでしたが、リーダーシップに真正面から取り組んだ力作、リーダーシップという観点での今までの著作の集大成がこれだという感じです。彼自身が世界銀行でナレッジマネジメントを広めたというChange Leaderです。今までも、変革リーダーがどのようなストーリーテリングを行うと効果的なコミュニケーションができるかという論点での著作はいくつかあるようです。しかし、ここでは、彼のリーダーシップ観、リーダー観が集約されているように思えるのです。そういう意味で、彼が「リーダーシップ」に本格的に取り組んだ最初の著作であると私は考えたのです。

 

まずデニングは、リーダーシップを変革のリーダーシップ(Transformational Leadership)であると定義します。

その上で、コアとなるLanguage of Leadershipの3つのステップと、それらのリーダーシップを効果的に発揮させるための6つの条件をあげていきます。

 

まず、コアとなっているLanguage of Leadershipの3つのステップはストーリーを使ったコミュニケーション術。そのステップはプレゼンテーションの基本に似ていると思われました。


3つのステップ
 

Step #1:聴衆の注目をひき (Getting the Audience's Attention)

Step#2:今とは違う未来を求める欲求をかきたて (Eliciting Desire for a Different Future)

Step#3:理由によって強化する (Reinforce with Reasons)

そして、その後、継続的な会話につなげていくことが大切だと説く。(Continuing the Conversation)

 

Step#2では、感情に訴え、Step#3で理性に働きかけるということのようです。そして対話につなげる。それができれば、苦労しないし、カリスマ性のあるリーダーでしか無理じゃないだろうかと思ってしまうところですが、デニングは誰もがスキルを身につけることで発揮できるのだと力説します。(タイトルでは、Languageを身につけることに喩えたのかも知れませんが、別のLanguageを身につけることの難しさを知っている人間にとっては、これまた難しいと思ってしまうのですが。)

 
6つの条件
 

6つの条件 (Enablers)の方が、リーダーシップを発揮するためのスキルや組織として整えるべき条件を示しているようで、私個人としては、より新鮮で、気づきも多かったので、次に紹介しておきます。

 

1.     Articulating a clear, inspiring change idea(そもそも目指すゴールがはっきりしていなかったり、私利私欲の追求だろうかと見透かされるようなものではだめ)

2.     Leader’s own story: committing to the change idea (自分が本気になって、変革の方向性を信じていることが大切。自分自身も信じていないような変革を誰が成功裡にリードできようか。)

3.     Understanding the audience’s story(変革に巻き込まれる人々のストーリー(彼らの声、彼らの立場にたった意見)をしっかりと受け止めて理解する。聞き入れろとはいっていないことに注意。理解を示すけれども、それとは違った方向に持っていこうとするわけだ。)

4.     Using narrative intelligence(なんとかintelligenceというのは、EQ =Emotional Intelligence の指数Quotient から流行になったようだが、このNarrative Intelligenceは、ストーリーの力をいかに理解して使いこなせるかという能力とでもいえようか。)

5.     Telling authentically truthful stories(本物の、本当のストーリーを語るべし。)

6.     Deploying body language (ボディランゲージを効果的に使おう。)

 


どれもこれも、聞けばあたりまえに思えることも多いのですが、ストーリーテリングの大家の名に恥じないくらい例として使われるストーリーがなかなか面白いのです。アル・ゴアが大統領選では失敗したが、地球温暖化問題では多くの聴衆をひきつけたのはなぜか?変革に失敗した雑誌編集者の話など....。

 

しかし、彼の著作を読まれたり彼の講演を聞かれた方はお分かりだと思いますが、彼のいうストーリーテリングは、ハリウッドの脚本家が書く波瀾万丈のストーリーではありません。むしろ、目的にとっては、彼がミニマリストアプローチと呼ぶ余計なことを剥ぎ取った短いストーリーが成功することがあるのです。あるストーリーを語ることによって、相手(聞き手)自身が持っているストーリーを呼び覚ますような、そんなSpringboard storyの効果がいい例だと思います。

だからこそ、普通の人がスキルを身につけることによって、彼のいうNarrative Intelligenceが向上してリーダーシップを発揮できるようになると説くのです。

 

ただし、ストーリーテリングという手法の範疇から抜け出てリーダーシップ全般を視野に入れて書いた本であるがゆえに、正直いって、How toの部分と高い視点からリーダーシップを論じた部分が混在し、多少焦点がぼけたかなという気はします。

 

次回は、Made to Stickを取り上げたいと思います。これも、コミュニケーションに関連することですが、2007年のベストセラーの一つです。こちらは、デニングの本よりも読みやすかったです。

 

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