先のブログで予告したように、いくつかの本邦未訳のビジネス本を紹介したいと思います。まず第一弾。
Hard Facts, Dangerous Half-Truths, and Total Nonsense: Profiting from Evidence-based Management
Jeffrey Pfeffer, Robert I. Sutton
Harvard Business School Press; 1 edition (March 1, 2006)
組織や人事についてのグルの一人であるフエッファー教授と、イノベーションと組織についてのこれまたグルの一人であるサットン教授の共著。
二人の共著としてはKnowing-Doing Gap (邦訳:「実行力不全」)に続くもの。
医療の分野で使われていたEvidence-based Management を広くビジネス界に広めるきっかけになった本である。いかに通説や俗説に惑わされたマネジメント慣行が多いか、流行を追うだけで役に立たない経営手法が多いかということを、理論と研究の成果によるEvidenceを用いてぶった斬るものである。まじめだが痛快。「ブレークスルーアイデアと呼ばれているものは、だいたいが過去の理論や手法の焼き直しにすぎない」として、実際の証拠を示して論じていく。
一方で、第一印象として、コンサルタントのうわべだけ新しい袋にした手法を鵜呑みにするのではなく、学者が実証した研究の成果を実務で活用して欲しいという、先生方のやや我田引水の主張のようにも聞こえた。また、証拠のないものしか実行しようとしなくなると、革新的なことへのチャレンジができなくなるのではないかという懸念も生じた。しかし、これらは誤解だった。
よく読んでみると、強調されているのは、経営者の、あるいはHRプロフェッショナルとしての「あるべき態度」であるように思う。「自分は何でもわかっている」という傲慢さを戒めると同時に「自分は何もわかってない」から手もでないという臆病さも戒めているのである(P52)。何がわかっていて、何がわかっていないかを冷静に見極め、そしてわからないことは実験して一歩アクションを起こして確認してみる姿勢が大切だとする。
本の内容をもとにしたハーバードビジネスレビューの記事の邦訳はあるが、このBook自体は2008年5月末現在邦訳されていないように思う。
日本で最近出版された戦略本の中にも、この本にインスパイヤーされものがあるようだ。
(憶測ですが、きちっと引用も示されているのでそう思いました。好意的に評価しています。その本とは、「なぜ新しい戦略はいつも行き詰るのか」清水勝彦著)
次回の本紹介は、The Secret Language of Leadership: How Leaders Inspire Action Through Narrative
by Stephen Denning を紹介してみたいと思います。ファイナンシャルタイムズの2007年ベストブックにノミネートされています。