「企業内人材育成入門」という本が出版されました。(10月19日発行)
人事部長さんには、ちょっと基礎的なことが多くて歯ごたえに乏しいかもしれませんが、企業内の人材育成を新たに担当するようになったマネージャーの方や、部門に転入してきた方にはおすすめでしょう。でも、人事部長さんにも、アマゾン等で見出しだけでも流し読みしていただければ、企業内人材育成に関心のある方は、部下に勧めてみるか、ちょっと読んでみるかと思われる方がでてくるかもしれません。感想をこのコメントなどでお寄せいただければ幸いです。
著者の中原さんとは数年前にお会いして、人材育成畑の野中郁次郎さんになるかなと思った(ご本人には伝えてないが)才能溢れる研究者です。
本の表紙や前書きから、少し長く抜粋してみます。
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企業内人材育成入門
中原 淳 (編著)
あなたの会社に人を育てる科学はありますか?
学習のメカニズム・動機づけの理論・学習環境のデザイン・研修の効果・機能するOJT・・・
人事・教育・研修担当者、経営幹部必携
「人はどのようにして学ぶか」「学びの場をどのようにつくりだすか」「学びの効果をどのように確かめるか」を理解できる。
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「仕事は現場で覚えるもの」「そんな教え方じゃ..」「この研修って役にたつの...」教育や学習に関しては、誰もが一家言持っている。それは、各人の経験に基づいた、いわば「私の教育論」である。
しかし、「私の教育論」は、ともすれば弊害をもたらすことも多い。
企業内教育を統御する立場の人間が、「ある一人の人間の被教育経験」という、第三者から批判を受けにくい限定的な一事例を根拠に、企業全体の教育システムを改善しようとする時、その弊害は前景化する。
われわれはこう考える。「そもそも、企業はどのような人材を、どのように育成すればよいのか」という問いに対して「私の教育論」のレヴェルで答えるべきではない。諸理論の知見をエビデンスとした処方箋が選択され、組織の意思決定として承認され、ノウハウをもった人々によって、集団に対して適用されるべきである。
昨今の戦略的HRMの考え方に依拠してみても、人材育成は、組織が主体となり、かつ安定的に実施されなければならない事項であるという認識が広まっている。「私の教育論」に基づく危うさを回避し、安定した人材育成プロセスを保証するためには、私の立ち位置を離れ、人材育成に関する知のありようを俯瞰する必要がある。
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(私のコメント)
人材育成「入門」とあるように、「入門」なので、そこで紹介されているような理論については、入り口まで導いてあとは自分で勉強しなくてはならないのは当然です。解答を求めるハウツー本ではありません。といって、学者のアカデミックな理論書でもありません。著者のグループは企業出身者も含み、企業との交流を深めてきた人たちです。現場の悩みも反映しています。
たとえば、「企業教育の政治力学」という章は、企業教育の実態を政治力学という切り口でうまく表現していると私は感服しました。(もちろん、さらにどろどろした実例や、解決のヒントをもう少し掘り下げて提示していただきたいという気もしました。)
さらに、Evidence-based という考え方も紹介されています。これは、PMC会員の先輩からも紹介されたEvidence-based Management (EBM)につながってきます。このEBMを中心にとりあげた本を出版したのが、スタンフォード大学のJeffrey Pfeffer と Robert I. Sutton で、米倉 誠一郎先生が、PMCの例会で講演された時に紹介された、"Weird Ideas That Work: 11 1/2 Practices for Promoting, Managing, and Sustaining Innovation"の著者がこの Robert I. Sutton。というように(論理的には結びつかないけれども)、最新の知見が、しかも、経営学の領域も含んだ広い知見がバックグラウンドにあるということも強調しておきたいと思います。
ここに書かれていることは、私がブログでネタにしようと考えてきたことの多くが書かれています。研究者の方ほどの知識を持っているわけでもありませんが、問題意識はかなり重なっているからです。ある意味、こんないい「ネタ本」がでたら、ブログを書けなくなってしまうという危惧があります。何を書いても、この本でちゃんと学者がしっかり書いているよと、言われてしまうでしょう。(逆に、この本のことを秘密にしておいて、これをネタにしてブログを書いてしまおうかという誘惑さえでてくるのです。)どちらにしても、倫理的な人間である私としては、書きづらくなってしまいました。罪な本です。
ということで、ブログについてはある領域に突っ込んだ話や、今は人材育成中心ですが、労務を担当していた時代の昔話をこれから書いていくことになりそうですが、私のブログにまで影響を及ぼすとは、影響力のある本だと評価できるかもしれません。
「アカデミズムの世界、企業人事部の世界と、ギョーカイ(コンサルティングや研修業界)、これらが人材的にも交流するような時代が来るべきだ、もっと人材育成部門はプロフェッショナルになるべきだし、理論的な知見も吸収していかなくてはならない。この動きに先鞭をつけていきたい。」これは、数年前、私が長く勤めた企業へ提出した退職願に添えて大見得をきって書いた内容です。今できることは、そのような動きをしようとしいる人たちに温かいエールをおくること位なのですが.....。