日頃特別古いものに魅かれるというわけではありませんが、たとえばアルコール
を楽しむとき、新しいものより古い酒、古典的なカクテル、古びたブランドのビール
を選んでしまう傾向があります。飲む場所も、できればその店(場所)の矜持を
感じさせるようなところ、例えばホテルのバーなどでもそこでの時の流れを感じさせ
るようなカウンターバーが好きです。
今回、仕事半分、息抜き半分で3年ぶりに訪れたニューヨークで今回も泊まった
ラデイソン レキシントンホテルから程近い、ミッドタウンでは由緒深いウオルドフ
アストリアホテルのメインバーのカウンターで暫し時を過ごしました。当日はたまたま
イースター前のグッドフライデーで人出が多かったせいか、ホテルのロビーは異常な
ほど混雑していましたが、一歩バーに入ると意外とひとは少なく、特にカウンターは
空いていて気軽に席を取ることができました。バーの内装、床のモザイクは往時を
偲ばせますが、全体はさして特徴のない地味な雰囲気です。
カウンターのなかにはたった1人だけやや年のいったバーテンがいて、それがいか
にもそこの主のような感じで、黒服、蝶ネクのありきたりのいでたちながら、姿勢を
ただし、長い歴史を誇るアストリアホテルのバーならではといった感じでカクテルを
つくっていました。
そのうち隣に、かなり若い感じのアジア系の青年が1人ふらっと入ってきてある注文
をしました。服装もラフでやや場違いな感じでしたがイースターの集まりを抜けてきた
のか、バーの雰囲気と関わりなくオーダーしたのが、どうもかなり高級なラムだった
ようで、そのバーテンは一瞬躊躇し、やおらIDカード(免許証?)の提示を求めました。
多分飲酒年齢の確認だったのでしょう。青年は気軽にカードを示し、バーテンはそれを
確認すると、かなり真剣に方々の棚を探し回ってやっと注文の酒のボトルを見つけだし
ショットグラスに1杯ついでカウンターのうえをスルスルと本人の方に軽いタッチで押し
出しました。青年はカウンターの椅子にはすわらず、まさにスタンドバーといった感じで
暫く時間をかけて立ち飲みし、チップを含めたcash をおいて立ち去りました。
ただそれだけのことですが、横で飲んでいながら。「ああ古く由緒深いアストリアのバー
も、今風な若ものが気軽に利用するように変わりつつあるナー」と思いつも、黒服の
バーテンの雰囲気の中に、どんな客にも差別なく対応するという歴史あるホテルのバー
の矜持ともいうべき「さりげなさ」を感じさせされました。こちらも適当に飲んでそのバー
を離れましたが、なんとなく気持ちの安らぐひと時でした。
(4-7-'07, at Manhattan,NY)