戦後間もなく制定されたわが国の労働基準法は、その後多少の改定はあったものの
基本的には変わり映えのしない労働法制を続けて来ています。
最近になってやっと、これに対する見直しの動きが強まり、「新労働基準法」制定の動きが
あることも皆様ご承知のとおりです。
改定点はいくつかありますが、私が強く関心をもつのは「裁量労働制」に関する見直し
です。最近対象職種は拡がったとはいえ、かなり限定的な分野にしか「裁量労働制」
をみとめない日本の現行制度は欧米諸国にくらべかなり遅れているのではないでしょうか?
米国では exempt とよばれる、日本の「管理職」的な、ただ実際にはこれよりはるかに広い
範囲の労働時間自由裁量制があり、どこでどれだけの時間勤務しようとも所定労働時間
勤務したとみなされる制度です。
これにより労働者の自主性、自己責任性が尊重され、タイムカードなどの古い時代の
遺物は当然にすたれてゆくわけですが、最近私が自分の職業でもある「社労士」として、
クライエント会社A社(ホームページ、ビデオなどの企画、製作会社)の新しい就業規則を
起案し、会社・社員代表の了解をえて所轄の労働局(旧、労働基準局)に届出をしたときに
意外にも、局側が「裁量労働制」のありかたに強い懸念を持っていることがわかりました。
それは一言で言えば、「本来、所定の労働時間では処理できないような過重な労働(知的
内容の労働)を課しながら「裁量労働制」の名のもとに、長時間の超過時間勤務に対する
正当な対価を払おうとしない会社が少なからずあり、この面から裁量労働制のありかたに
たいし、強い疑念をもっている」ことです。本来その時々の作業環境により、所定労働時間
より短い勤務、長い勤務があり、これらをおしなべてみればほぼ所定労働時間が守られる
ことになるはずが、会社側が「裁量労働制」の美名のもとに意図的な過重勤務を社員に
強いる会社があるということのようです。
無論、これらに対する懸念解消のため、実際の労働時間を記録し年間を通じて長時間勤務
が続くようなケースに対しては、一定の基準での「特殊業務手当」などが払われ、必要なコンペ
が行うケースも考えられますが、決められた勤務時間にいちいち拘束されずに自主的に
「のびのびと」勤務できるような「裁量労働時間制」の企図を損なうようなケースが現実に起り、
これを労働行政当局が懸念し就業規則のcheck を行うようでは、わが国の労使関係の後進
性がいつまでも続くことになりかねません。外資系人事にたずさわるものとしてこの懸念を
払拭する体制を創設したいものとおもいます。
松田弘